「マルシェ・ド・ノエルのころ」      浜美人   

 12月のパリはイルミネーションで活気づきます。その昔、寒くて暗かった冬のパリは経済の発展につれ明るく豪華に、まるでディズニーランドのようにきらびやかになりました。デパートや商店は個性的な飾りつけを競い合い、プレゼントを探す人々の心をひきつけますが、庶民の日常生活に欠かせないテントや屋台のマルシェ marche´(市場)もあります image。パリ市内に20も30もあるとも言われるマルシェの中には、250以上の屋台が並ぶところもあります。

 待降節の間、マルシェ・ド・ノエル(クリスマス市)が休みなく開かれ、日用品はもとより、クリスマス用の花や飾り、豪華食材など何でも揃っています。店の人たちはヴァン・ショー vin chaud(香辛料入りホット・ワイン)で身体を温めながら、寒さの中、昔ながらに大声で呼び込みをしています。グルメの国だけあって食品の数は豊富で新鮮。肉屋の店頭にはジビエ gibier(狩猟した獲物)と呼ばれる雉、鳩、七面鳥、兎などがぶら下がっていて、日本では見なれない光景です。シャンパン、七面鳥、フォアグラ、そしてクリスマスには欠くことのできないブッシュ・ド・ノエル bu^che de Noe¨l (木の切り株のようなケーキ)。この盛大な市も24日夕方には、あとかたも無く消え去り、パリは静かにキリスト降誕祭の日を迎えるのです。

 キリスト教徒は一般に家族揃って真夜中のミサにでかけ、教会から戻るとお祝いの食事が始まります。フランスでは、イブには肉を控えて伝統的に魚料理を食べる地方、最後の晩餐にちなんで13種類の料理やデザートをだす地方など、各地に古くから伝わる料理があるようです。

 クリスマスはキリスト教では一年の区切りで、日本の新年のようなものです。家族全員が集まって一族の繁栄と幸福を願い、一年で一番贅沢なクリスマスの食卓を囲む。これは家族のための特別な日で、いつかこの日の食卓、会話などがその家族の習慣、伝統になって次の世代へと受け継がれていくのかもしれません。日本の正月にも相通じるものがあります。また魔除けとして伝わるツリーと日本の門松。クリスマス・プレゼントとお年玉あるいはお歳暮。クリスマス・ミサと初詣。宗教は違っても、こうした祝祭には何か近いものを感じるのです。

 それでは皆さま、ジョワイユー・ノエル Joyeux Noe¨l (メリー・クリスマス)そして良き新年をお迎えください。

浜美人さん・・・
1941年横浜生れ。フランス文学専攻。
初めてのパリ滞在はパリ5月革命翌年の
1969年。その後再三。
愛読書「田舎暮らしの本」。

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